”サイレントマジョリティー”がヒットした理由


先行く人が振り返り「列を乱すな」とルールを説くけど、その目は死んでいる。
 
夢を見ることは時には孤独にもなるよ、誰も居ない道を進むんだ。
この世界は群れていても始まらない。「Yes」でいいのか? サイレントマジョリティー。
 
どこかの国の大統領が言っていた。「声を上げない者たちは賛成している」と。
 
誰かの後をついていけば傷つかないけど、その群れが総意だとひとまとめにされる。
 
One of them(集団の中のひとり)に成り下がるな。

 

強烈な歌詞です。
ご存じの方も居ると思いますが、これは“欅坂46”というアイドルグループの“サイレントマジョリティー”という名の楽曲です。
発売当時、私はたまたまテレビでこの歌を知ったのですが、初めて聞いたときには衝撃でひっくり返りました(笑)。
ですが私がもっと驚いたのは、この曲が日本で大々的にヒットしたことです。
YouTubeでの公式MVの再生回数は1億5000万回を超え、平均して国民一人当たり一回以上見ている計算になりますね。
 
 


“先行く人”とは、学校ならば先生や先輩たち。会社ならば上司や先輩社員でしょうか。
その人達は新入の者に学校や会社の、いえ、社会のルールを説いているけど、その指導をする先輩たちの目は生き生きしているのでしょうか? 若者らに従わせるそのルールやシステムには、現代に於いても合理的な意味があると本当に心から信じているのでしょうか?
もしかしたらそれ以前に、その組織やそこにいる自分に対しても同程度の疑念を持っているのでは?
 

どこかの国の大統領が言わずとも、沈黙は「YES」と同意です。
自分の信念を否定するものであっても、目立ちたくないから、目をつけられなくないから沈黙するのですか?
 

今やダルビッシュ選手や大谷翔平選手など、日本人メジャーリーガは当たり前ですね。
ですが彼らは既に存在する道を、先駆者の後を追って行ったのです。
荒れた誰も居ない道を開拓してメジャーリーグに行ったのは、日本のプロ野球球団と揉めて退団(会社で言うところの辞職)し、「日本人はメジャーでは通用しない」と散々叩かれながら行った野茂英雄選手です。
メジャーに行ってからも始めは向こうの記者たちから冷たい目で見られ、観客からは野次を飛ばされ、年俸も激安でした。

ですが彼の活躍と成功により、その後をついて行く者たちが次々とあらわれたのです。
今や日本のトップ選手はメジャーで通用するのが当たり前だと言われるほどですね。
今ならばメジャーに行くと言っても誰もバッシングされないし、メジャーリーグでも始めから高給でVIP待遇でしょう。
よって誰も嫌な思いをしない、つまり傷つきません。

昔は日本のプロ野球の制度に多くの選手が不満をもっていましたが、誰も声を上げませんでした。それなのに現代ではこの様に自由な状況です。
それもこれも、選手の意志でメジャーや他球団に移籍でない現状のプロ野球制度に満足しているのは「選手たちの総意ではない」と野茂選手が示したからです。

前例のないことをすれば、多かれ少なかれ叩かれて傷つくものです。
逆に既に市民権を得ているものは、すべからく苦労した誰かの前例があるものなのですよ。
つまり、殆どの人は誰かの後をついて行っていると言えるでしょう
 
 
サイレントマジョリティーとは、“静かな多数派”という意味です。
この曲はそんな殆どの、普通の日本国民に対するアンチテーゼとも取れるでしょう。きっと普通の人たちは耳が痛いはずです。
それなのに、ともすれば自分たちの生き方や価値観を否定するような曲になぜそれほど魅了され、シンパシーを感じたのでしょうか?
 
答えは何かって? うーん……。あまり平均的な人ではない私には良くわかりません(笑)。
ですが多くの、つまりマジョリティーの人たちも実はこの歌詞のようなことを潜在意識の中で感じているのではないでしょうか?
だからこそ共感し、心に響いたのだと考えるのが最も自然でしょう。
 
ではなぜ皆は行動を起こさないのでしょうか? なぜ物言わぬ多数派のままで居るのですか? もしかしたら「誰かがやってくれる」のを待っているのではないですか?
それとも同調圧力による恐怖の方がいつもモチベーションを上回るのですか?
 
どれも当たっているようでピンとこないですかねえ……。
理由は恐らくそれほど簡単な話ではないでしょう。私が思うにその理由の一つは、そんな考えを打ち消してしまうほどホメオスタシスが人々に強く働いているのではないかと考えています。
結局それを打ち破るだけの強い意志を持った人だけが行動に移し、新しい道を作るのでしょう。
そしてそのような人物が、いつの時代もある確率で出てくるのです。
 
でもその様な人は少数で良いのかもしれません。きっとそうでないと社会が上手く回りませんからね。
では私は一体、何が言いたいのかって?
 
皆さんそれぞれに、色々な事情があることでしょう。だからあなたがその、声を上げたり行動を起こす人になることが必ずしも良いとは思っていません。そのままでも良いのです。
なので私が願うことはただ一つ。たとえあなたがサイレントマジョリティーの一人であっても、何処でどの地位でいても、

「誇りを持って生きて欲しい」

それだけできっと何かが変わるはずです。ええ、本当に。
 
まあ実はホメオスタシスの説明以外にもっとこの件について有効な考察が有るのですが、その前にいくつかハードルを超えなければならないので、この話はこの辺にしておきましょう。
 

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