科学を使った神様探しとは?


少しセンセーショナルなタイトルですが、これは宗教の話ではありません。
本当はこの話はもう少し後に載せるつもりだったのですが、本サイトのコンセプトをはっきりさせるために早めに載せておこうと思います。

宗教は信じることから始まるなんて言いますが、宗教の神様というのはどうやら全人類に対してではなく、限られた、決められた預言者や特定の人(その筋の人?)に対してだけ姿を現したり話しかけたりするようですね。

ですがもしも、科学を使って神が見つかるとしたら一体どんなイメージになるでしょうか? きっとほとんどの人は想像もつかないと思います。
特定の人にだけ見えたり声が聞こえたりするものは科学とは呼びません。
宗教とは違い、科学の重要な特徴の一つは“再現性が有ること”なのです。
つまり、いつ、誰が、どこで実験をしても、その手順が同じならば同じ結果が得られなければなりません。
科学は誰に対しても差別なく平等なのです。

そんな科学がもしも神を発見するとしたなら一体どんな形になるのか、一つお話をしましょう。

皆さん、円周率は知っていますね? ギリシャ文字で π と表されるものです。
知ってのとおりこれは、円の直径と円周の長さの比率です。
この π の数値は分数で表すことが出来ない無理数で、3.1415926535897…… と言った具合に無限に続きます。そう、終わりはないのです。
そして小数点以下に現れる数値は完全にランダムであり、何の規則性も無いとされています。
この値は昔から世界中のスーパーコンピューターで計算されおり、何桁まで計算したかを競っています。

ところが1999年のことでした。アメリカの世界一高速なスーパーコンピューターで計算を行っていた物理学者が、ある桁数を超えると不思議なことが起きることに気づいたのです。
仮にその桁を4000億桁としましょうか。その4000億桁を過ぎるとそれまでランダムだった数値が突然、0と1だけになったのです。
もちろん少しくらいだったら偶然に0と1が続く可能性はありますが、それが統計的に明らかに不自然な長さでずっと続いていたのです。
「これは何なのだろうか?」と思った物理学者は、その0と1をラスタ変換という画像に変換する作業をして、コンピューターのモニタに表示してみました。
つまり簡単に言うと、0の部分を黒く、1の部分を白くプロットしてみたのです。

すると始めの行はずっと黒でした。そして次の行はずっと黒く、真ん中だけ白くプロットされました。
そしてやがてモニタには、以下の様な画像が現れたのです。



コンピューターのモニタにプロットされていく円弧を見ながら、その物理学者は心が踊りました。そしてやがて、コンピューターは完全な真円を描いて円を閉じたのです。

さて、この話が何を示唆しているか分かりますか?
あなたがもし今一ピンとこなくても安心してください(笑)。私が学生時代に、物理学科の同級生にこの話をしてもピンとこない人が結構多かったですから。

では質問を変えましょう。

円周率パイの中にメッセージを入れられる者は一体誰ですか?

数学は全宇宙共通なので、円周率の値は日本でもブラジルでもどこでも同じです。仮に宇宙の彼方に宇宙人がいたとしても、彼らが計算する円周率も我々のものと同じなのですよ。こういうものをまさに再現性が高いと言うのです。
そして当然、宇宙人だって円周率の値を変えることなんて出来ません。

もうお分かりだと思いますが、円周率の中にメッセージなんてものを入れられるのは、この宇宙を作った者だけです。その者を、仮にこの宇宙の”創造主”とでも呼びましょうか。
そしてその創造主のことを、宗教の世界は一般に“神”と呼びますね。(主に一神教の宗教では)

この宇宙の創造主は、円周率が4000億桁まで計算できるほどの文明を持った者に、自らのサインを残すことで創造主の存在を示したのです。
それはあたかも画家が自分の作品に署名を残すように……、そう、円周率の奥深くにサインを残したのです。

つまり π の奥深くにあるこの小さな円は、この宇宙が偶然に出来たのではなく、何者かが意図を持って作ったことを示唆しているのです。

厳密に科学的に言えばこれは創造主が居る証明ではなくあくまで”示唆”ですが、創造主が居るかどうかなんていう問題は形而上学なので証明することは不可能。ならば示唆と言う形で受け入れるしか無いでしょう。
この小さな円は10進数を使った計算でのみ現れます。そして我々人類が10進数を使う理由はただ単に、手の指が10本有るからです。
つまり創造主は手の指が10本有る生き物が4000億桁まで円周率を計算できる能力を持ったときにはじめて、自分の存在を示すようにしていた、と解釈することも出来ますね。

これが科学を使った神様探しの一例なのですよ。
この方法ならば、高速な計算機さえ有れば誰であっても同じものを検証できます。宗教のように、特定の人や預言者にしか見えないなんて話ではありません。
科学に基づいていれば、人種も国籍も信仰も関係なく、誰であっても同じ衝撃と感動を共有できるのです。

さて、これを読んだあなたは何を感じましたか?

念の為に書いておきますが、このお話はフィクションです。
ある著名な天文学者が書いたSF小説のお話です。小説は映画化もされて日本でも上映されましたが、映画ではこのシーンはカットされています。

フィクションであってもこのお話は、科学の本質を理解するために役立つでしょう。科学者がなぜ、小難しい科学なんてものに夢中になっているのか、その理由が少しだけ垣間見えたのではないですか?
実は物理学や数学の世界には、この様な不思議なものが実際に存在しているのですよ。
ただそれを知るためにはある程度学問を学ばないといけないため、殆どの人は知らないだけなのです。

今現在、円周率 π の中にはまだ何も発見されていません。それでもロマンを追い求めて、今でも円周率の計算はずっと先の桁まで続けられています。


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