満腹パイの時代に具体的に訪れること 前編


満腹パイの時代については、今までに何度も述べてきました。その時代は一見、パラダイスに見えることでしょう。
人間がついに労働から解放されるのですから、これは便利な社会を追究してきた人間にとって、ある意味でゴールと言えるはずです。

キリスト教の教えでは元々、人間は楽園に住んでいたとされていますね。そこでは労働する必要もなければ、出産の苦しみもなかったそうです。
ですが我々の先祖が楽園で罪を犯したことにより神の怒りに触れ、人間は地上に落とされました。そしてこの地では男性は一生労働して食べ物を確保しなければならないという罰(苦しみ)が与えられ、女性には出産の苦しみが罰として与えられたとのことです。

一般に欧米人は過去に奴隷を使うなど労働を嫌悪する傾向が強いとされますが、その根本にはきっとこの様な考え方があると学校で教わったことがあります。ええ、だって「労働は罰」なわけですから。

なのでキリスト教徒にとってこの満腹パイの時代に向かうテクノロジーの進歩は、地上に落とされた自分たちがまた楽園に戻るための努力とも言えるでしょう。
そして満腹パイの時代が訪れた時こそ、ついに、人間は罪を償って神の許しを得たのだと解釈することが出来るはずです。

もちろん、現時点でその様な事を言っているキリスト教徒は一人も居ないと思われますが、もし私が神父や神学者だったらきっとその様に解釈して教えると思います。そうしたならば、さぞかし説得力があることでしょう。とても論理的で辻褄が合いますからね。

よって、満腹パイの時代はキリスト教徒とは親和性が高いと思われます。
欧米人がこの満腹パイの時代に向かうことに肯定的なのは、潜在意識の中にこういったキリスト教的な考え方があるのだと思われます。

しかしながら、我々日本人はこれらとは考え方も価値観もかなり異なります。
更に言えば、敬虔なキリスト教徒だったパスカルも違う意見を持っていたことは以前に書きましたね?

そもそも、労働、つまり職業というものは食べるために、要するにお金を稼ぐことが主たる目的だと考えている人が現在でも多いと思います。もちろん、仕事自体が好きな人も居るかも知れませんが、もしお金がもらえないとしたらきっとやらないことでしょう。
何れにせよ、殆どの人にとって職とはお金をもらう手段としてのウェイトが大きいはずです。

ですがこれは歴史的に考えれば仕方がないことです。
長い人類の歴史に於いて、来年まで生きられることが当たり前になったのは本当に最近のことですからね。歴史の中の殆どの時期に於いて、ある割合の人たちは飢餓で死んでいました。

その他にも病気や戦争などで命を落とすことが普通だったのです。なので人間の行動のモチベーションが「生きるため」であることが殆どであり、その他のことを考える余裕は無かったのですよ。

しかしながら満腹パイの時代になれば、人間は誰もが何もしなくても寿命を全う出来ます。
その気になれば、生まれたての赤ん坊から老衰で死ぬまでの間、ずっとベッドに寝転んだまま過ごしてベッドから出ずに生涯を終えることもできます。AIを搭載した機械が人間が生きるために必要な作業、労働の全てを行ってくれますからね。

もしかしたらその状態がパラダイスだと考える人が日本にも居るかも知れませんが、それは

とてつもない間違い

です。
これについては今までにも何度も言ってきましたが、何度言っても言い足りないほどです。

満腹パイの時代を一言で言えば、「皆が好きなことだけをやって生きていける時代」です。
現代の言葉で言えば、生涯、趣味のことだけをやって生きていける時代ということです。

例えば温泉旅行に行くもよし、海外旅行に行くもよし、ゴルフをやるも良し、キャンプに行くもよし、とにかく毎日それだけをやって生きていける時代です。ええ、100年間365日ずっと!

ですがどんなに好きな趣味であっても、毎日100年間やっていたら必ず飽きます。
人間の脳は必ず飽きる様に出来ており、それが仕様なのです。

そしてやがて人々に訪れるのが、

とてつもない虚無感

です。

現代に於いても、好きなことだけをして生きている人にそれが訪れていることは既に知られています。
少し前にファイヤーなんて言葉が流行りましたね。これは若いうちに一生遊んで暮らしていけるだけのお金を稼いで、早くリタイアする生き方でしたね。

日本にはあまり居ないかも知れませんが、アメリカには実際にその様な人が多く居ます。
例えば銀行や証券会社に雇われているトレーダーなどは、三十代までに数百億円単位のお金を稼いで三十代でリタイアする人が実際に居るのですよ。

しかしながら、一見羨ましく見える彼らですが、リタイア後の平均余命って知っていますか??
何と2年程度らしいですよ。ええ、まだ三十代なのに! 信じられますか?

つまり社会に対して、正確に言えば他人に対して何の役割も機能も果たさなくなった人は、DNAから命令が来るのです。

「死ね!」

と。

そして原因が良く分からない臓器の不具合で死ぬのです。
ですが医学の進歩などにより、やがて内臓の不具合では死ななくなると、次は脳に命令が来るのですよ。

「うつ状態になれ!」

と。

要するに自殺を促す様に脳が働くわけです。
きっとこれが彼らの虚無感の正体だと思われます。

以前に魚の鮭の話を書きましたね。鮭は生まれた川に産卵と受精のために戻ってきて、数十万匹もの鮭が一斉に同じ日に産卵するそうですね。
そしてメスは産卵が終わったら、オスは受精が終わったら、何と同じ日にその数十万匹が死ぬそうです。
信じられますか? ほぼ同じ日に数十万匹の鮭が死ぬのですよ? 

たとえそれが寿命による死だったとしても、鮭だって個体差があるはずで全く同じ日に死ぬことは有り得ません。
では伝染病などによって皆が同じ日に病死したのでしょうか? いいえ、それも違います。実際に川の水を調べた人が居るそうですが、菌もウィルスも発見されなかったそうです。
それに仮に病気だとしても、昨日までピンピンしていた何十万匹もの個体が感染して僅か一日で全て死ぬというのはあまりに不自然です。

つまり彼らにはDNAから命令が来ているのです。「生物としての役割が終わった者は死ね」と。
実はこれについては、私と同じ疑問を持って実際に死んだ鮭を解剖して調べた学者が居るらしいのですが、なんと不思議なことに全ての臓器が急激に老化していたそうです。ええ、僅か一日で!
つまり鮭たちの死因は、急激な老化による老衰ということになるでしょうか。

そして重要なことは、それと同様の仕組みがどうやら人間にも存在しているらしいのですよ。
このことを知らずして幸福も真理への到達も有り得ません。

実際に愛する者の介護をしている人は、介護をされる側の人よりも幸福度が高いことは有名ですね。しかも幸福な上に健康で長生きするそうです。
その理由は

「自分が他者に対して役割を果たしているから」

以外の何物でもありません。

これは私の勘ですが、キリスト教的な価値観を基礎に持つ欧米人には、永遠にこの真理に至ることが不可能な気がしています。
ええ、実はキリスト自身はそう言っているのにもかかわらず、です。

もしこのままテクノロジーを進化させて満腹パイの時代になれば、

全ての人類がファイヤーした人と同じ状態

になります。
その世界は楽園どころか、虚無と倦怠にまみれた地獄であると私が言っている理由が分かって頂けたでしょうか?

続く……。

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