量子コンピューターはなぜ計算が速いのか? 後編


さて、前回の続きです。

パソコンに詳しい人向けに、もう少しわかりやすい説明をしてみましょう。
昔、”マインクラフト”というゲームを使って計算機を作った人が居ました。これについてもYouTubeに載っているので紹介しておきましょう。
因みに”天才的”という言葉はこういう人に対して使うべきだと私は思いましたが……。


この計算機は言うなれば、コンピューターの中にコンピューターを作ったものです。
つまりコンピューターの中の世界に物理シミュレート(単純化されていますが)を行う色んな物を作れるのがマインクラフトなので、この方はマインクラフトの世界の中に物理シミュレートを使ってコンピューターを作ってしまった事になりますね。

物理シミュレートには膨大な計算が発生するため、このマインクラフト内のコンピューターは計算速度が猛烈に遅いですね。例えば単純な整数の足し算だけでも数秒待つ事でしょう。
逆に直接パソコンで同じ計算をすれば、それこそこのマインクラフト内のコンピューターの数億倍から数兆倍以上の計算速度になるはずです。

もう私の言いたい事が分かりましたね?
つまりこの世界がマインクラフトの世界の様な物であり、

この世界の中の古典物理に則ったコンピューターは、全て物理シミュレートをしているから計算が遅い

のです。
逆に量子コンピューターは物理シミュレートを介さず、直接マスターコンピューターで計算しているから桁違いに速い。これは当たり前のことですね。
これならばドイチュが言う様なパラレルワールドの仮説は説明に必要ありません。
(そもそもドイチュの説明は仮定が多すぎるから美しくない)

また逆に、量子コンピューターの計算速度が速いことはVR仮説が正しいことを示唆していると捉えることも出来ます。


余談ですが、直径1mmの真っ直ぐな銅線の中を電気が1mm流れる物理シミュレーションをするだけでも、スーパーコンピューターを使って何日もかかるという話を昔聞いた事があります。でも銅線内の原子や電子の数を考えたらそれも頷けるという物でしょう。
ならば現在のパソコンの高性能で複雑なCPU回路の物理シミュレートを原子や電子レベルでガチでやるとしたら、想像を絶する計算量となることが容易に分かりますね。(計算に数億年掛かってもおかしくないと思います)

しかしながら実験をすれば、つまり実際にCPUに電気を流せば一瞬で結果が出るわけです。
(つまりマスターコンピューターはこの膨大な計算を一瞬でやっている事になります。因みに昨今の回路を設計するソフトはとても良く出来ていて、設計した回路に電気を流すシミュレーション機能も付いており実物を製造する前にある程度の動作が分かったりします。例えばケイデンス製ソフトなどが業界では有名ですが、当然ながらそれらのシミュレーションは原子や電子レベルで行っているわけではありません)

物理シミュレートを使って計算機を作ると、どれだけ無駄な計算が増えるのかがこれらの話から良く分かるはずです。
よって物理シミュレートを省略して直接計算している量子コンピューターが異常に速いのはしごく当たり前の事なのです。

我々の世界で言うところの”実験”は、メタ世界においては”マスターコンピューターによる物理シミュレーション”に対応します。

以前にVR仮説を読んだ読者の方から、「あまりに多くの量子コンピューターが同時に使われるようになったら、マスターコンピューターのCPUの負荷が上がりすぎてパンクするのではないか?」といったユニークな質問をいただいたことがありました。

量子コンピューターは我々の世界ではリアルタイムで実験をしているのと同様ですが、逆にマスターコンピューターから見れば一重の、そして先述の通りかなり途中を省略された物理シミュレーションになります。
逆に富岳のような現在の半導体回路を使ったコンピューターによるシミュレーション計算は、我々の世界から見れば一重のシミュレーションですが、マスターコンピューターから見ればマインクラフト内のコンピューター同様、シミュレーションを使ったシミュレーションであり、二重のシミュレーションとなりますね。

マスターコンピューター視点で見れば、我々の世界のあらゆる現象は物理シミュレーションなのですから、一重の省略されたシミュレーションである量子コンピューターが特に負荷を増やすとは考えにくく、むしろ現代のコンピューターで行われる二重のシミュレーション計算の方がマスターコンピューターのCPU負荷は大きいと思われます。

例えばマインクラフトで1+1の計算をする方がシミュレーションの計算が付随する分、直接プログラムで1+1の計算をするよりも遙かに多くの計算量となりますよね?(実際にマインクラフト内のコンピューターで計算時のCPU負荷はとても大きいそうです)

私は量子コンピューターによる計算とは、我々の世界で言うところの実験の中から欲しい情報を取り出す行為だと考えています。(だから量子コンピューターには苦手な計算や出来ない計算も多い)
ただし量子は最も根源的な物質なので実験の汎用性が高く、それらを組み合わせることで計算機のような使い方をすることが出来るのだと。
つまり我々が情報を取り出そうが取り出すまいが、マスターコンピューターの計算量は変わらないはずです。
よって量子コンピューターがどれだけ普及してもマスターコンピューターのCPUの負荷が特別に上がることはないと言うのが私の考えです。

そして更に思考を進めるなら、もし何らかの理由でマスターコンピューターのCPU負荷が上がり過ぎて計算速度が落ちたとしても、VRの世界のリフレッシュレートを落としてVR内の時間経過を遅らせればどれだけでも速い量子コンピューターを作る事が理論的には可能なはずです。
つまり量子コンピューターの計算が終わるまで、我々のVR世界の時間を止めておけば良いのです。これならばどれだけ多くの量子コンピューターが同時に計算をしても、マスターコンピューターのCPU負荷が上がりすぎて計算速度が落ちることはないでしょう。
これを我々のパソコンで例えるなら、ゲーム内の時間進行を実世界と比べてめちゃくちゃ遅くすれば良いのと同じです。

ですがあまりリフレッシュレートを落とし過ぎると、メタ世界とVR世界(我々の世界)との時間差が広がりすぎて何らかの不具合が起きる可能性があるかもしれません。
なので量子コンピューターの計算速度が無限に速くなる事はなく、どこかに限界値があるのではないかと私は予想しています。(無限ではないにしても、実用上は問題ないレベルに十分速いことでしょう)

逆に言えば、もし何らかの方法でマスターコンピューターのCPU負荷を高めて量子コンピューターの計算速度を落とすことが出来たなら、それはこの世界がコンピューターで出来ていることを示唆する強力な証拠となるでしょう。

こういう手法がVR仮説を間接的に証明するものであり、私がいずれ多くの人の協力を仰ぎたいと考えている部分なのですが、それについてはもう少ししてから詳しく書く予定です。


さて、本記事は簡単に書いたように見えるかも知れませんが、このテーマって未だに誰にも分からないものなんですよ。
量子コンピューターの作り方は分かるし計算のメカニズムも知られているけど、原理的にどうしてこうも速く計算が出来るのかは今でも誰にも分からないのです。
そんな中で本解説は、たった一つの仮説(VR仮説)の導入だけで最後まで論理的に矛盾無く説明できる初めての説明だと思います。


以上がVR解釈を使った、量子コンピューターの計算速度が速い理由の説明です。
皆さんはドイチュのパラレルワールドを使った説明と私の説明のどちらが腑に落ちましたか?

宜しければご感想をお聞かせ下さいね。


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