物理学にはゴールがある


世の中には多くの学問がありますが、「これで終わり」という明確な場所が存在する学問は、おそらく物理学ぐらいではないでしょうか?
 
医学や生物学、化学や、或いは文系科目の政治学や社会学にしても、「はい、これで終わり」という場所は恐らく無いはずです(笑)。
ですが物理学には「この理論が出来たら物理学の仕事は完了」という、明確な最後の理論があるのです。
ここではその理論について、簡単に説明してみましょう。
 
物理学という学問は、換言すれば“力の法則”を解明する学問です。そしてこの世界には、実は4つの力しか存在していません。
(これらの力のことを“相互作用”と言います)
それは、

強い力、弱い力、電磁気力、重力。

以上の4つです。

強い力とは、原子核の中で陽子や中性子などをくっつけている力です。弱い力は、原子を崩壊させる力です。
電磁気力と重力については良いですね? それぞれ電気や磁気の力、万有引力である重力の力です。

これらのたった4つの力の組み合わせだけで、この宇宙は動いているのですよ。

因みに我々が日常で体験する力は重力と電磁気力の2つだけです。 残りの2つは、原子核の中の様な超ミクロの世界だけで起きる力ですからね。
ときどき「第5の力を見つけた!」なんてニュースが物理学の世界に走ることがありますが、現在のところ確認はされていません。
 
つまり、我々が日常で体験する重力以外の力は、すべて電磁気力ということになります。
電磁気力についてはいいですね? 電気や磁気が引き合ったり遠ざけ合ったりする力のことです。
電気と磁気は基本的に同じものだと考えてください。 同じ力を別の角度から見ているようなもので、双方が密接に絡み合って作用します。
 
例えば人間の筋肉が出す力も電磁気力だし、車のエンジンを動かす力も元を辿れば実は電磁気力なのです。
日常で体験する重力以外の力は、元を辿っていけばすべて電磁気力なのですよ。
 
そしてこれら4つの力の理論を統一しようというのが、物理学の大きな流れです。
実は宇宙ができた直後にはこの4つの力は同じものだったとされています。そして宇宙が冷えるにつれて、はじめに”重力”が枝分かれをし、次に”強い力”、そして最後に”弱い力”と”電磁気力”が分かれたとされています。
 
現時点で、”弱い力”と”電磁気力”は既に統一に成功しています。この理論のことを”電弱統一理論””標準理論”と言ったりします。
次にこれに”強い力”を統一したものを”大統一理論”と言いますが、これはまだ完成されていません。
そして最後に、”強い力”に加えて最も初期に枝分かれした”重力”を統一した理論のことを”超統一理論”と言います。
そしてこの全ての力を統一した”超統一理論”こそが、物理学のゴールなのです。
たった一つの方程式で、宇宙の万物の事がわかるのですからね。まあ後のことはコンピューターに任せて、物理学者の仕事は終わりといったところでしょう。
(これを終わりと定義するかどうかは人によって意見が分かれるところですが、私は以後の物理学はいわば注釈に過ぎないと考えています)
 
よってこの”超統一理論”のことを、英語の直訳で“万物の理論”とも言います。
因みにこの”万物の理論”の最右翼と言われている理論こそが、この世界は何からできているのか に書いた“超ひも理論”や、それを拡張した“M理論”なのです。
ただしまだそれが正しいかどうかは証明されていません。あくまで、”万物の理論”の候補の一つに過ぎないのです。
 
そしてこの”万物の理論”は、

全ての理論の上位互換の理論

ということになります。
電磁気学も量子力学も相対性理論も古典力学も、従来の物理学は全てこの理論の中に含まれることになりますからね。
 
最後に付け加えておきますが、”万物の理論”が存在しているかどうかは分かりません。
そもそも存在していないという懐疑派の物理学者も多くいます。
もし、そもそも”万物の理論”が存在していないとなると、物理学はある時にはこの理論を使い、またある時にはこの理論を使うと言ったような形で、あたかもパッチワークの布のような形で物理学が終息する可能性も有ります。でもそれではあまり美しくありませんよね?
なので物理学が一反の綺麗な布になることを信じて、物理学者たちは日夜研究を続けているのです。
 
ちなみに私個人的には、万物の理論は存在しているのではないかと予想しています。但しそれは、一つ又は複数の方程式の形にはならないのではないかと考えています。それについてはまた後にゆっくり述べていきましょう。
 
物理学に興味がない方も、この“理論の統一”“上位互換”という概念はとても重要なので覚えておいて下さいね。
これは物理学だけの概念ではありませんので。

 
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