EUのAI規制案について


先日、EUの欧州議会がAI規制案を可決しましたね。

この先見性はさすがにEUという気もしますが、私はAIの規制については悲観的な予測をしています。
今回はそんなAIの規制についてのお話をしてみようと思います。


実は私個人的には、十年以上前からAIについては規制した方が良いと考えていました。
もっと言えばAIに限らず、コンピューター全般に対しても社会に導入することについては、ある程度の規制をした方が良いと考えていました。
実際にそれをテーマとした小説も書いたこともありました。

私がコンピューターの導入に制限を設けるべきだと考えた理由は、一言で言えば「満腹パイ」の時代が来ないようにした方が人類の幸福度が高いと思っていたからです。
決してAIが映画のターミネーターの様に人類の敵になるとか、そんな理由ではありません。
実際に「満腹パイ」の時代に訪れる不幸については、今までに何度も書いてきましたね。

しかしながら何度思考を繰り返しても、思考の経路を変えてみても、私はAIを含めたコンピューターの規制は不可能だという結論に至りました。
やはり人類は合理化への道を引き返すことは出来ないように設計されているのだと思います。

現在のAIの研究で先頭を走っているのは、圧倒的にアメリカです。そして中国もそれに続く勢いで大金をかけて研究をしていると言われていますね。

https://ainow.ai/2021/02/24/252563/#2020AI
https://japan.zdnet.com/article/35205898/

そしてこの状況は今後もきっと変わらないと思われます。
因みにどうしてアメリカがこれ程AIに力を入れていると思いますか?
一番の理由は民間向けの商品やサービスのためではなくて、明らかに軍事的な理由なのですよ。
そしてこれがAIの研究を規制出来ない理由なのです。

もしもアメリカが倫理的な理由や失業者を増やさないためなどの理由でAIの研究を凍結したり一次停止したなら、AIの技術は確実に中国に追いつかれ、そしてあっという間に抜かれることでしょう。
そして中国が世界一のAIを所有するようになったら、それは世界一の軍事力を持つこととほぼイコールになると思われます。
この話は私が昔に書いた小説「石の軍師」そのものですね。
つまりこれからの時代に於いては、AIは立派な兵器なのですよ。

だからアメリカが世界一の軍事大国である事をやめない限り、AIの開発で中国に負けるわけにはいきません。
「日本が今すぐにやらなければならない事」に書いたとおり、人間がトラやライオンに支配されないのは、ひとえに知能が彼らよりも高いからです。

AIは戦争に於いても戦術や兵器の開発、その他の用途にとても有用です。またハッキング(クラッキング)に対してだって世界一の性能を持つAIから身を守る術は恐らく無くなるでしょう。
つまりいつの日かAIの持つ知能が総合的に人間を超えたなら、世界一のAIを所有する国がきっと世界を制覇出来るでしょう。
ええ、その時には囲碁や将棋で人間がAIに歯が立たないように、政治や戦争に於いても人間はAIに歯が立たなくなるはずです。

よってもし世界的にAIに対する規制を決議したとしても、必ず抜け駆けして開発を続ける国が出てくるはずです。そしてもしその国が高性能のAIを開発してしまったなら、世界はその国に支配されることになりかねません。
どこかの国がいくら後から「ルール違反だ」と言ったところで「うるせー」と言われて実力行使で潰されて終わりです。
世界最強の国家に制裁を加えることなどは、今までもこれからも不可能なのです。

だからアメリカは決してAIの開発を止めることは出来ないのですよ。
そして同じく覇権を狙う中国もAIの開発を止めることはないでしょう。

この構図は昔の米ソの核開発競争と良く似ていますね。

よっていくら日本やヨーロッパでAIを規制したところで、意味がありません。
むしろAI後進国は損をすることの方が多いと思われますし、下手をしたら強いAIを持つ国に支配されかねません。

既に人類がAIの無い世界に住むことが出来ないと決まっているなら、逆に日本こそAIの開発に力を入れるべきだというのが「日本が今すぐにやらなければならない事」に書いたことでした。

ここで「軍事はともかく、社会への導入は規制することが出来るのではないか?」と思った人も居るかも知れませんね。
ですが残念ながらそれも難しいと思われます。

例えば日本で雇用を守るために民間企業や社会へのAIの導入を規制したとしましょう。
では例えばAIをバンバン社会に、そして企業に導入している国が作る製品に日本がコストで勝てると思いますか?
またAIは安いだけでなく極めて優秀な労働力なので、コストだけでなく品質でも勝てないのではないでしょうか?
つまりそんな高くて質の悪い日本製品を買う国はありません。というか、国内だって皆さんは高くて質の悪い物なんて買いませんよね?

つまり経済に於いても、AIを規制することは極めて難しいのですよ。
鎖国している時代ならともかく、今は世界が繋がってしまっていますからね。

これらが私がいくら思考を繰り返しても、AIやコンピューターを規制することは不可能だという結論に至った理由です。
もし良い解決策をお持ちの方は、是非教えてください。
因みに私は、人類は既にパンドラの箱を開けてしまったのだと考えています。


AIを規制したEUがこれからこの問題とどう向き合っていくのか、とても見物ですね。
日本でも今後AIをどう使っていくのか、長期的な国家戦略について議論を始めるべきでしょう。
と言うか、もう遅いくらいですが……。


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